《MUMEI》 本番前ふたりは一番近い環の楽屋に入った。 目が合うと、自然と唇か近付いていく。 環はドアを背中にしていて、誰も入ってこれないようにカギをかける。 唇は合わせないと言ったが、自然と唇は合わさっていた。 最初は唇を合わせるだけのかわいいキスだった。互いの唇を吸い、角度を変えながらキスをする。 「ん………っ、んんっ!?」 環は驚いて目を開いた。口の中に異物が入り込んできたから。 一一キス……したことないって言ってたのに…。 口から溢れた唾液がこぼれてつたっていく。 「る…流理さん……。苦しいです…………」 環のか細い声で慌てて離れた。息が荒く切れ、頭がぼ一っとする。 「流理さん…練習になりましたか?」 「はい……ありがとうございました」 ――バタバタバタ 足音が近付いてきた。その足音は環の楽屋の前で止まる。 一一コンコンッ そしてノック音。 「環?もうすぐ撮影始まるぞ」 「ハ…ハイ。今行きます」 「大丈夫か?春日くんとのキスシ一ン…嫌か?」 「全然大丈夫ですから。先に行っててください」 しばらくマネ一ジャ一はドアの前に立っていたみたいだったが、すぐに戻っていった。 「……行きましょう、流理さん」 「あ……はい」 ――オレとキスするの…嫌? 前へ |次へ |
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