《MUMEI》

「わ、絵の具付いた!」

弥一のシャツに赤い絵の具が付着した。

「あらららら。流水と石鹸で洗いなさい。」

弥一は卜部に言われるがまま教室内に設置された水道を使って洗う。

「先輩落ちる気がしません」

「油に水だからねー。」

卜部は棚を漁り始めた。

「なんだか、赤は血まみれみたいで嫌ですね」

弥一のシャツにピンクの泡が広がるばかりだった。

「本当、悪い奴だー」

「先輩重い!」

弥一の背中に卜部がのしかかる。
乗るというよりは既に包まれているという状態だ。

「秘密兵器持ってきたで。」

弥一の真横から卜部の手が伸びた。
シミに青い液体がかかる。

「洗剤液ですか?」

真上に居る卜部を弥一は見上げた。

「そう、頑固な汚れも落とすんですってよ。」

そう言いながら卜部はぷちぷちと弥一のシャツを開けていく。

「先輩何すんですか!」

「え、汚れているから。半分濡れてるし脱いだ方がいいかなと。」

卜部には悪気はなく、全て気遣いからきた行動である。

「先輩があまりモテなかったの分かる気がします。」

「煩いよ弥一!」

卜部は顎で弥一のつむじを刺してきた。

「痛いです!」

弥一の反応に卜部は笑いが込み上げる。

「……ほら、落ちてきた。」

卜部は揉み洗いしながら落としてゆく。

「本当だ。有難うございます。もう一人で出来ますよ。」

柔らかく弥一は微笑む。

「弥一、脱がなくていいのか?」

卜部の言う通りに弥一のシャツはずぶ濡れだった。

「脱いでほしいんですか?」

「……やっ、そんなこともないけど。冷たいかなとかね?」

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