《MUMEI》
見える
振り向くと、見知らぬ男が羽田に手を差し延べている。

歳は三十代中頃だろう。
身長は高く、かなり鍛えているのか、がっしりとした体はまるで格闘家のようだ。
もう片方の手には、やはりレッカと同じような、しかしレッカの物より一回り大きな銃が握られていた。

羽田は戸惑いながらその手を取る。

「大丈夫です」

ゆっくり立ち上がりながら、羽田は言う。

「レッカ。おまえも大丈夫だったか?」

男は視線をレッカに向けた。

「あ、ああ。サンキュー、副長」

レッカは妙な表情を浮かべて副長と呼んだ男と羽田を見比べている。
見ると、その隣でやはり怪訝な表情で凜もまた、羽田を見ていた。

「この人たちは逃げ遅れた人たちか?」

「え、いや、その。……副長、見えるんすか?」

「なにがだ?」

「だから、この二人」

レッカは羽田と凜を指差した。
すると、副長は眉を寄せ「当たり前だろう」と腕を組んだ。

レッカは驚いた表情で凜と顔を見合わせた。
羽田はよく理解できず「どうしたの?」と二人に問う。

「先生、やっぱり何かが変わったみたいです」

凜の声は固い。
しかし、羽田は意味がわからず首を傾げる。

「忘れたんですか? こっちの人たちに、わたしたちは見えないはずなのに……」

「あ!」

羽田はなぜ二人が驚いているのか、ようやく理解した。

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