《MUMEI》

ここの商店街が少し変わっている。

普通は、駅前から真っ直ぐ店が続く場合が多いが、この商店街は、駅から出て最初の交差点を右折して、続いていく。

直進すると、二つ目の信号ですぐに国道に繋がるから、距離的な問題なのかもしれない。

(あ、来た)

見覚えのある軽自動車が、左折してくるのが見えた。

車は、私の前で停まった。

「久しぶり、蝶子ちゃん」

「お久しぶりです」


私はまず、荷物を後部座席に乗せ、それから助手席に乗り込んだ。


「五年ぶりね。元気だった?」


「はい。咲子(さきこ)さんは?」


「うちも、相変わらずよ」

そう言って、咲子さんは車を発進させた。


咲子さんは、私の父の妹で、私にとってはおばにあたる人だ。


『おばさん』と呼ぶと、怒られるから、咲子さんと呼んでいる。


私は、明日から咲子さんのお店で、住み込みで働く。

伊東 蝶子―二十歳。


転勤族の父と、以前暮らしていたこの町に


五年ぶりに、私は帰ってきた。


「あ〜、引っかかった」


咲子さんの車は、ロータリーを出てすぐの交差点で停まった。


ここの交差点の、待ち時間は、今も長いらしい。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫