《MUMEI》

「蝶子ちゃんのお部屋、こっち!」

「私達の隣!」


私は二人に両腕を引っ張られながら、階段を更に上がり、三階の部屋に向かった。


「「ここ!」」


ドアの入口には、確かに平仮名で『ちょうこちゃんのお部屋』と書かれたプレートがかかっていた。


咲子さんは、サバサバした男っぽい性格と、クールな外見に似合わず、可愛いものが大好きだった。


「うわ…」


予想通り…


いや、予想以上に、乙女な部屋に私は驚いたが…


「どう? 気に入った?」


「え、…はい」


居候の身で、文句も言えない私は、頷いた。


何しろ、ここ以外に私の居場所はもう無いのだから。

私は黙々と、荷物整理を始めた。


「「蝶子ちゃん?」」


(しまった)


双子が部屋に残っているのを忘れていた。


「な、何?」


「蝶子ちゃん、お店で働くの?」


「うん、そうよ」


「『シューズクラブ』行くの?」


だから、何故そこで靴屋が…





「「ねぇ、行くの?」」


双子は何故か必死な表情だった。


正直、私は、『あいつ』がいるかもしれないと思うと…


「わからないけど、行きたくないかな?」


「「本当?!」」

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