《MUMEI》
帰休
「乙矢、そっち違う。七生も靴ちゃんと履けてないから」

乙矢は壁に向かって突き進もうとしている。
七生は踵を踏んだまま雪の中を歩こうとしていた。

「……関心するわ」

見送りの東屋が呟いた。
俺も同感だ。


右肩に乙矢、左肩に七生を三人四脚のようにして担いで歩く。


「乙矢、二郎に近ぇんだよ」

「知らんなぁ」

二人が揺さ振りかけるので足場が危うい。

「二郎、コイツはお前を付け狙うヤローなんだからな!気を許したら喰われるぞ?!」

七生は話しながら俺の肩を引き寄せる。

「食べるだなんて下劣な表現だな、俺はちゃんと親愛なる二郎に接吻をしたんだけど?」

接吻とか言うな……!乙矢の指が肩甲骨に添う。

「ふあ……っ」

背筋が橈む。

「フフ、感度イイ。」

乙矢め酔っ払って誰かと勘違いしているのか?

「じろー何ソレぇぇ」

首を左に引っ張られた。七生が凝視している。

「痛い……」

首グキッっていったぞ!

「俺以外にエロい顔見せるな!」

また訳分からん事を言いやがって……。

「醜いな男の嫉妬は。」

乙矢はまた要らんことを……!

「んだとコノ!」

久しぶりに飲んだと思ったらすぐこれだよ!

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