《MUMEI》

「あ……、七生っ、あっ」

七生の肌から汗が滴る。

「……じろーだけだ。」

怖いくらいにしがみついてきた。

「あ、あっ………… 暑苦しい!」



七生は俺の部屋に入っても俺の首に腕を巻き付けたまま離さない。

熱帯夜にこれは辛い。

七生の腕を解いて両手を結ぶ。
向かい合うとまだ虚ろな表情だった。

「俺は七生の傍にいるから。」

気持ちの整理がつくまでいるから。

「……もうちょっといい?」

離された分取り戻すように七生が近付いてくる。

「うん」

だっこ人形みたいに足で囲んできた。

「……もっと……」

なんて顔をしてんだ。子供みたいだ。
眠るまで母親を離さない子供。

「遅いから、寝ようよ。ほら、布団敷くから」

「ヤダ!!」

立とうとしたらしがみついて来た。

「……シィ!声でかいよ」

頭を撫でてやる。

「…………じろー、俺がさ俺じゃなくても好き?」

「何言ってんだ。」

七生は七生だ。

七生が更にしがみつく。




「――――――――俺、父さんとの子供じゃなかった…………。」

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