《MUMEI》 (しかも…) 咲子さんのメモはかなり細かく指示が書かれていた。 『豚しょうが焼き弁当』 ご飯・肉・しょうが多め (体育会系だなぁ) 靴屋の店員というより、スポーツ選手みたいだ。 『さばの塩焼き弁当』 主食 五穀米又は玄米 味付け薄め 野菜多め 量 少なめ 栄養バランス注意 (健康志向なのかな?) …素人に、というより同業者に作っているような緊張感があった。 『ロコモコ弁当』 とにかく見栄え良く! (へ? これだけ?) 見た目重視って、女の子みたいだ。 (えっと…最後は…) 「…げ」 「どうしたの?」 「あ、いえ…」 最後の弁当のメモを見て、顔をしかめた私を、咲子さんは不思議そうに見つめた。 今は丁度お客様が途切れていたので、咲子さんは厨房の隅で遅い昼食をとっていた。 気を取り直して、私は最後の弁当を仕上げた。 (このメニューにこの指定…) 間違いなく、これを食べるのは『あいつ』だと、私は確信した。 本当は、作りたくなどなかったが (これは、仕事なのよ! 蝶子!) 私は、自分で自分を励ましながら、『あいつ』の弁当を仕上げた。 前へ |次へ |
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