《MUMEI》 「できました」 私は、咲子さんの前に、弁当四つと、具沢山の味噌汁が入った専用の容器を置いた。 「ご苦労様。はい、これ」 「?」 私は反射的に、咲子さんが投げた物を受け取った。 「これ…」 私は、嫌な予感がした。 「うん」 咲子さんは、ヒラヒラと手を振りながら、笑顔で言った。 「裏口から入って、事務所に置いて来てね。 あ、お金も忘れずにもらってね。 行ってらっしゃい」 …て。 (まだ、お昼食べて無いんですけど!) と言いたいけど。 そこは、ぐっと堪えて。 「行ってきます」 私は、空腹でイライラしつつも、店を出た。 そして咲子さんから受け取った鍵で 駐車場にある自転車を出す。 (良かった〜電動だ) 実はここから『シューズクラブ』までは、距離は短いが結構な坂道で。 行きは下りだが、帰りは上りになるから、心配だった。 グ〜 (うぅ、お腹減ったよぅ〜) さっさと置いて、帰ってきて、お昼食べよう! 私は、カゴに荷物を乗せ、走り出した。 さすがに下りは早い。 あっという間に私は『シューズクラブ』の前に辿り着いた。 前へ |次へ |
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