《MUMEI》 (ええと、裏口は…) 昔通りなら、店の横の駐車場から入れるはずだ。 (あったあった) 三台停まれたはずの駐車場は、店が増築され、二台分になっていたが、裏口は、確かにそこから見えた。 私は駐車場に自転車を置き、裏口に入ろうと… ? ドアノブを回しても、扉が開かない。 (困った) 「あの〜、すみません」 とりあえず、声をかけてみる。 …反応無し。 「あの〜、『クローバー』ですけど」 (お?) ドアに人影が映った。 かなり、大きい影。 「すみません、お弁当、お持ちしました」 「あんた…誰?」 「は?」 低く響く男の声は、明らかに私を警戒していた。 「だから、『クローバー』の者ですよ」 「嘘」 (嘘って…) 「『クローバー』ですってば! お弁当四つと味噌汁お持ちしました!」 「だって…」 まだ、ドアは開かない。 「咲子さんの声じゃない」 「新人ですから!」 困った。 食べ物だから、地面に置いて帰るわけにもいかないし。 (もう、しょうがないなあ) 私は、仕方なく、ドア越しに、自己紹介を始めた。 「初めまして。私は― 前へ |次へ |
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