《MUMEI》

女の子達に挟まれるように座っていた茶髪のスーツの男が、機嫌をとりながら、外へ出ていった。


多分、『ロコモコ弁当』だ。


男は、ものすごく身だしなみを気にしていた。


と、言うことは…


俊彦がひざまずいている女性の隣にいる、黒髪メガネのスーツの男が


『さばの塩焼き弁当』だ。

(それにしても…)


俊彦は…


変わっていなかった。


「またのお越しをお待ちしております」


そう言って、俊彦が見つめているのは


女性の顔


ではなく


女性の


ミニスカートから伸びた


美しい足


だけだった。


変わらない


「…送って差し上げて」


うっとりと、足を見つめながら、俊彦は指示を出した。


『さばの塩焼き弁当』君は、頷いて、女性を優雅にエスコートした。


(帰ろう)


これ以上、『あいつ』を見ていたら


変わらない『あいつ』を見ていたら…


その時。


俊彦が、こちらを振り向いた。


(まずい)


私は、後ずさりした。


「…」


俊彦は、目を丸くしていた。

「あ…」


俊彦の目が潤んでいた。


(落ち着け、蝶子)


私は自分に言い聞かせた。

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