《MUMEI》

「ええと…」


「彼女は、お弁当を届けてくれたんだよ」


(雅彦ナイス!)


この流れなら、違和感無く帰れる。


「そ、そうなんです。
もう、行きますね」


その時。


「うわっ! お前何その顔!」


『ロコモコ』君が叫んだ。

俊彦が、倉庫から出てきたのだ。


手に、何故か赤いハイヒールを持って。


「と、俊彦… ご…」


「ごめん」


(へ?)


謝ろうとしたら、先に俊彦が謝ってきた。


「まだ、俺を許してないんだよね」


(そりゃ、まぁ…)


もちろん、許していない。

「気の済むまで、やっていいよ

…でも」


?


俊彦は、赤いハイヒールを私に差し出した。


「同じ痛めつけられるなら、平手じゃなくて、これ履いて、…蹴ってほしいな」

プチッ


切れた私は


顔を赤らめる俊彦の腹に


「ふざけんな! この足フェチ! 変態!」


拳で会心の一撃を与えた。


「ぐっ…」


うずくまる俊彦。


慌てる『さばの塩焼き』君と、『ロコモコ』君。


「私、帰る!」


そして私は『シューズクラブ』を後にした。


雅彦が


「蝶子ちゃん!お金!」


と叫んだのも聞かずに―

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