《MUMEI》

「あ、先輩!!」

卜部は下半身に立ち込める情念を振り払うべくその場から離れた。
廊下を直線に走る彼の後ろ姿を弥一は追う。

卜部はトイレに引き篭る。

「先輩、俺です。」

「…………」

確かに居るが居留守を使っていた。

「…………隠れないで下さい。俺、その、 嬉しいです から……」

弥一の体に卜部の情根が当たったことを示唆している。

「……弥一、俺、そういうの付き合って直ぐはまずいと思うんだ……。
……けど体は正直で 

こんな格好悪いの見せたくなかったんだけど」

卜部は呼吸困難を起こしたかのように悲痛な叫びだ。

「先輩、卜部先輩……格好悪くないです。むしろ、見たいです。
……卜部先輩が俺で乱すところ」

弥一は素直に言う。

「……エロ人間……。
名前呼んでよ弥一、溜まってンの出すから名前呼ばせろ、返事しろ。弥一……」

扉越しにもたれながら卜部は自分の硬くしたものを擦り始めた。

「はい、卜部先輩……」

弥一はどんな音も聞き漏らさないように扉に耳をそば立てた。

「弥一っ、 弥一 」

「卜部先輩、  先輩……」

扉越しに身を擦り寄せながら互いに呼応する。

「弥一 弥一、やいちっ、やいちぃ…… 」

繰り返し呼びながら、摩るのを早めた。

「卜部先輩 せんぱ……、 ……………………………世喜先輩」

弥一は卜部を名前で呼ぶ。

「やい…… くっ」

本人を前にしての吐精……いつもより、充足された。
流水音の後、卜部が出て来る。

「卜部先輩……有難うございます。」

弥一は頬を上気させながら卜部の袖口を引っ張る。

「弥一、さっきみたいに悦く名前で呼んで?」

卜部はたっぷり情愛を込めて囁いた。

「よ、よよ よ……世喜」

多少吃りながら弥一は言う。

「よく言えました。」

弥一は会話の一つの流れみたいに自然な接吻をする。
弥一はみるみるうちに赤面した。

「自分から誘っといて、照れてる。」

笑い飛ばしながら卜部は手を洗った。


「……気付いてたのは少しだけ酷いです」

弥一は卜部の背中に顔を伏せて照れ隠しした。
次の悩みはこの鼓動を止める術であろう。



二人の悩みは尽きない。

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