《MUMEI》 弁論大会僕には兄弟がひとりいます。彼は僕のたったひとりの家族です。父と母が事故で亡くなり、祖父母も既に他界していて、さらに僕達を引き取ってくれる親戚もいませんでした。よって、僕達はふたりで生きるしかありませんでした。今もそうです。 弟は今、事情があって高校には通わずに働いています。生活費や僕の授業料などの一部は彼が稼いでいるのです。 弟は「勉強するより働く方が全然楽しい」と言っています。でも僕が制服を着て家を出る時、いつも背中に視線を感じます。一回だけ振り向いたことがありました。弟の表情は今まで見たことが無い程悲しそうでした。 僕はこの学校を辞めようと何度も考えました。兄である僕だけが学校に通う訳にはいかないと思ったからです。でも弟は許してくれませんでした。 「学校に行けることだけが幸せじゃない。たったひとりの家族のために働けることも幸せだ」 そう言ったのです。それから、 「お前が学校生活を楽しんでくれればまた頑張って働く気になる」 とも言ってくれました。 僕の将来の夢は、弟を学校に通わせることです。高校に行ってなくても、大検に受かれば大学に行けます。その時のために、僕は頑張らなければなりません。地球上にひとりしかいない弟のために、たったひとりの家族のために。 皆さんには夢がありますか?夢は叶える為にあります。しかし叶えないままだと、それはただの夢で終わってしまいます。僕達には輝く未来が待っています。これからも、何事も恐れずにぶつかって行きたい。弟のためにも、何事にも負けない強い心を持って。 2年3組 谷口流理 前へ |次へ |
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