《MUMEI》
―転入生、蓮
「…あ、あれ、もしかして、君が転入生?…名前は?」

憂音が辛うじて転入生に話しかける。
周りは人形のまま。
動かない、話さない。


「…そうだけど。蓮。」

「蓮かぁー、よろしく!俺は憂音。」

「はぁ…、よろしく。」


なぜか憂音はすぐにいつもの口調に戻り、気軽に話しかけた。


転入生は、困っているのを顔に出してはいるが、普通に返事をした。
思ったより、普通。


「蓮はさー、何処から来たのー?」

へにゃりとしながら絡む憂音を見て、皆は粘土になった。軟らかいけど、動けない、モノ。


「…さぁ…。俺の席何処?憂音。」

「ここだよっ!」


質問の返事をしたのは、質問された人ではなかった。
―僕の横にいる、瀬恋だった。
しかも、ちゃっかり僕の腕を掴んでいて、何故か僕ごとぐいっと転入生の前に行った。


「…誰?」

「うちは、瀬恋!で、これが、斬雨!」


―有り得ない、と思った。

瀬恋は、自分から近づくなと忠告しておきながら、今現在それと会話して、しまいには僕を紹介している。

“終わった…”


「ふーん。変わった名前だな。」


転入生は無関心のような顔をしながら返事をして、椅子に座った。


「待って待って!あと2人紹介させてっ。あれが光で、それが楸だよ。他の皆もいい奴だから、仲良くしてねー!」

「…はぁ…。てか、…あのさ。宵咲だっけ。君さ……だよね…?」

「!」


瀬恋が目を見開く。
正直、僕も驚いた。


転入生が、小さな声で、瀬恋に言った言葉は、聞き取ることが出来なかった。
真横にいる僕が聞き取れなかったのだから、恐らく、瀬恋以外の人は聞き取れていない。


瀬恋は十分に理解しているようだ。


「…そうだけど、…何で……誰?あなた。」

「…蓮って、さっき言ったけど…。」


何故か焦りが見える瀬恋に、淡々と返事をする転入生。


また、人形になった。
今度は、僕等以外。


何か危険な気がする。
この転入生は。

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