《MUMEI》
お嬢様の寄り道
「ありがと、キナちゃん」

「構へん構へん。ゆっくりして行きや?」

「うんっ」

あたしと來斗は、よくここに来るんだ。

キナちゃんはいつでも歓迎してくれる。

「どないしたん咲月、お茶冷めてまうで?」

「‥あ、うん」

「────あのう」

「あ、和泉さん」

「いらしたんですね、皆さんも」

「うん。和泉さん珍しいね、ここに来るの」

「はい、お散歩をしていたら近くまで来たので、お土産を買いに。お祖母様は、ここの桜餅が大好きですから」

「桜、あんたもどない?」

「いえ、ご相伴に与る訳には──」

「まぁええから座り。お茶飲まへん?お菓子もあるでな」

「和泉さん、ほら座って座って♪」

「は、はい‥」

和泉さんは屋敷に住むお嬢様。

いつも桜色の着物を着てて、お雛様みたいに可愛い。

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