《MUMEI》
ズルい女。
『…痛いよ。コウタ。』




『…。』




『…離して。』




『…。』




『離してってば。』




私は、おもいっきりコウタを蹴飛ばした。




『………痛てぇ。』




テーブルの角でぶつけたのか、床に散らばってるゴミに当たったのかは、分からなかったけどコウタの額から少し血が出ていた。




『…ごっ。ごめん。』




私は、額の傷に手を伸ばした。
すると、コウタは私の手を払いのけ、




『……大丈夫だから。』




と言うと、うつむいたまま私に背を向け、




『…………帰るわ。』




と言って帰ってしまった。




ガチャンッッ





ドアが閉まったとたん、涙が溢れてきた…。




“このままコウタと終わっちゃうのかな…”




ふと、そんな事が頭に過った自分がとてもイヤになった。




だって、私はズルい。




…ずっとコウタの気持ちには気付いていた。




唯一の男友達なんていっていつも甘えていた。




ずっと気付かないふりをして傷つけてきた…。




本当は分かってた。




コウタの想い…。




だから、コウタとは恋愛の話を避けてた。




私はコウタの優しさを利用してたんだ…。




言えなかった。




“コウタはいつも笑わせてくれて、勇気づけてくれる大切な友達。…でも、あなたといると、あなたと話していると時々ヨウスケの事を思い出す。”




“あなたを好きになっていたら良かったのに。と思ったこともあった。…だけど、ヨウスケが忘れられなかった。”




この3年間、私がヨウスケの事を忘れられるまで待っていてくれた。



…私はサイテーな女。
もう恋をする資格なんてないよ…。

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