《MUMEI》

店内には、流行りのBGMが流れ、部屋の隅の椅子の上には、咲子さんお手製の巨大なくまのぬいぐるみが座っていた。

くまは、中央に四つ葉のクローバーが刺繍された可愛らしい白いレースのフリフリエプロンを付けていた。

それから、壁には咲子さんの旦那様が趣味で撮ったこの町の風景の写真が飾られていた。


クローバーの客席は、二十五席。


白いレースのテーブルクロスの四人がけのテーブル席が五つと、五人がけのカウンターがある。


私は、一番端のカウンター席に座ろうとしたが…


真ん中の席に、一枚のおしぼりタオルが入ったカゴと、レース編みのコースターに乗った陶器のコップがあるのを発見して


そこに、ストンと腰をおろした。


「いただきます」


コップに入っていた冷たい麦茶を一口飲んでから


私は、サンドイッチを黙々と食べ始めた。


…すごいスピードで。


おかげで。


「あら? 間に合わなかった?」


咲子さんがサラダとスープを持ってきた頃には


私は、最後に残った一口サイズの玉子サンドを握りしめていた。


「すみません」


私は、照れながら、順番が逆になったサラダとスープも美味しく頂いた。

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