《MUMEI》

その後、私は咲子さんからカウンター越しにコーヒーをもらった。


咲子さんは、立ったまま、コーヒーを一口飲むと、口を開いた。


「で、さっきの話の続きなんだけど…」


ギクッ


空腹が満たされて、私は、冷静に自分のした事を振り返ってみた。


(最悪な事しちゃったよなぁ)


しかし、話さないわけにはいかない。


私は、コーヒーカップを置いて、立ち上がり、頭を下げた。


「すみませんでした!」


とりあえず、謝る。


「ど、どうしたの?」


驚く咲子さんに、私は


勇気を出して


正直に


『シューズクラブ』であった一連の出来事を説明した。


絶対怒られると思った。


下手したら…


仕事初日にして、クビになるかもしれないと、ビクビクしていた。


そうしたら、住む場所も無くなってしまう。


咲子さんは、無言で私の話を聞いていた。


そして


「やっぱりまだ俊君ダメなのね」


と確認してきたので、


「…はい。すみません」


申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、私は頷いた。


「じゃあ、明日からは私が行くからいいわよ」


(明日から?)


と言うことは…

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