《MUMEI》

「いらっしゃいませ…。」


バーテンが現れた。


「なにか柑橘系のロングカクテルを彼女に…」


「かしこまりました…。

では…『ソルクバーノ』などはいかがですか?」



バーテンはカオリちゃんを一目見て、閃いたように提案してくれた。


グレープフルーツジュースがベースのレシピだ。


「いいね…。それを貰うよ。」


清楚な彼女にぴったりだ。グッジョブ…!


バーテンは、お辞儀をしてオーダーしたカクテルを作りに行った。


仕事帰りの彼女の疲れを癒すため、フレッシュな酸味の効いた一杯をプレゼントする…。


思えばこういった、さりげない気配りは、子供の頃から得意だった。

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