《MUMEI》
溢れた涙
「‥咲月、どないしたん？」

「ぇ‥？」

「何か‥あったんのとちゃう？」

あたしは‥言うしかなかった。

「‥來斗が‥‥來斗が白鴎 昴に狙われてる‥」

「？‥何でまた‥白鴎て変わったやっちゃなぁ」

「キナちゃん、あのね‥」

「何？‥何でも聞くで。言うてみ」

「あのね‥」

あたしが話した事を、キナちゃんは凄く熱心に聞いてくれた。

「ほな、白鴎の噂は‥やっぱりホンマやったんやな‥」

「キナちゃん‥どうしよう」

「大丈夫や。人間になっとる以上、白鴎は手ぇ出せへんはずやし」

「だけど──」

「ウチも協力するで。何としても、來斗くん守らな」

「っ‥キナちゃん‥」

あたしは泣いてた。

泣こうなんて思ってないのに。

「咲月‥？」

「っ‥‥凄く恐かったの‥。ずっと‥誰にも言えなくて、あたしが‥何とかしなきゃって‥」

「よう頑張った、よい頑張った。もう無理せんとき」

キナちゃんはそう言って、あたしの頭を撫でてくれた。

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