《MUMEI》
お目当ての品
彼女達全員がたのむ


『本日のケーキセット』


だった。


ちなみに、今日のケーキはバナナのパウンドケーキ。

そこに、チョコレートソースをかけた生クリームと、カットフルーツを添えて出す。


飲み物は、コーヒーか紅茶。


至って普通のメニューだが、彼女達にとっては、『特別メニュー』だった。


咲子さんは、注文をとる度に、同じやりとりを繰り返していた。


「あの、この『本日のケーキ』って、『シューズクラブ』で出されてるのと…」

「同じですよ」


咲子さんがにっこり微笑むと


「それ下さい!」


「かしこまりました」


こうして…


テイクアウトも含めて、大量の『本日のケーキ』が売れに売れた。


(道理で…)


前日から、咲子さんが大量生産していたわけだと、私は納得した。


それから、まだ開店前に、咲子さんがどこかへ出かけた理由もわかった。


この商店街には、和菓子屋はあるが、洋菓子店が無い。

『シューズクラブ』のあの店の雰囲気に、和菓子は合わないから、『クローバー』の洋菓子を、女の子達に提供しているのだ。


『本日の』と名の付くお菓子イコール『シューズクラブの』になるらしい。

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