《MUMEI》 ひたむきさそういえば昔も似たようなことがあったのを思い出した。 「誰、あの人?」 詳細を知らされず呼び出された太一は不思議そうに聞いてきた。 「今、千夏が熱を上げてる彼よ。ほら、バイト先でって騒いでたじゃない」 私が小声でそっと太一にささやく。 「おぉー!あれかー!?」 太一の目が少し大きくなる。 「客観的に見て判断して欲しいんだって…」 「ふ〜ん。でもさ愛加に頼むなんて千夏もセンスねぇな」 私の恋愛模様をほぼ把握している太一は、私の恋愛センスはゼロだと日々言っていた。 「私だって一度は断ったのよ!でも、どうしても!って千夏は強引だから。」 太一は女のこういった類いの計画を嫌がり、少しうんざり気味に言う。 「で、お前の相手役は俺ってわけ?俺より自分の彼氏を連れてこいよ」 「あの人は良いのよ。そろそろ終わりそうだし…」 「また?おいおい大丈夫かよ。」 太一が心配そうな顔をして聞いてくる。 「大丈夫、あんまり好きじゃなかったし」 「なんだよ、それ。お前はホントに。少しは千夏のひたむきさを学べよな!」 あれから数年経ったのに、千夏も私も変わってないなぁ〜。 同じことをまた繰り返そうとしてる。 ホントに二人とも相変わらずって感じで。 変わったのは… 私と太一の関係だけだわ… 前へ |次へ |
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