《MUMEI》
夕食
朝食は、咲子さんが二階の自宅の台所で調理するが、昼食と夕食は、『クローバー』の厨房で作る。


夕食担当の私は、鮭のムニエル・ポテトサラダ・ミネストローネを作ると、厨房から内線電話で衛さんを呼んだ。


衛さんは、私と一緒に仕上がった料理を二階のリビングに運んでくれた。


テーブルの上には既にご飯とお茶が並べられていた。

座っているのは咲子さんだけで、やこちゃんは箸を、せいこちゃんはスプーンを並べていた。


「お待たせしました」


私と衛さんは、料理の入った器をテーブルに並べた。

午後六時。


「いただきます」×5


私達は、夕食を食べ始めた。


「蝶子ちゃん、『シューズクラブ』どうだった?」

「う、うん。…すごい所だったよ」


やこちゃんの質問に、私は精一杯の笑顔で答えた。


「とし君と、仲直りした?」

「ええと…」


(困ったぞ)


せいこちゃんは、私の答えを待っている。


「いろいろびっくりしちゃって、まだ、してないんだ」


まさか頬に平手打ちして、腹に拳を撃ち込んだとは言えないから、私は曖昧な表現で誤魔化した。


仲直りなんて


するつもりはなかった。

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