《MUMEI》
出会った日の事
夜中。

あたしは目が覚めて、眠れないでいた。

「‥‥‥‥‥‥」

夢に見てたのは、來斗に出会った日の事。

あたしは、独りで森の中を散歩してた──。

『どこまで逃げられるかな、君』

『‥?』

声がして、あたしはその場所に向かった。

そしたら──‥

そこには誰もいなくて、小さな狼が怪我をして倒れてた。

『だいじょぶ‥?』

《触んな人間》

『ぇ‥』

《オレの前から消えろ》

『だ、だってケガして‥』

《噛まれてーのか》

『!‥、あ、あたしは傷つけたりしないよ?』

《‥‥人間の言う事なんか信じられっかよ》

『‥ねぇオオカミくん』

《消えろって言っただろ》

『あたしの家行こう』

《お前いい加減に‥》

『動いちゃダメっ。今だっこしてあげるから』

《!?》

あたしはその狼を連れて帰った。

怪我をした脚に包帯を巻いて、何日か一緒に過ごした。

「───────」

不思議だな‥。

まさか狼が家族になるなんて──まだその時は思ってなかったから。

でも──‥

あの日來斗と出会ってなかったら‥。

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