《MUMEI》
『ロコモコ』君
二人は、咲子さんと向かい合うように、カウンター席に座った。


「あ、マーメイドちゃん発見!」


(やば…)


『ロコモコ』君は、カウンターの奥の厨房にいる私を指差した。


「こらこら、うちの若いのを指差さないの」


「だって、自己紹介もしないまま、行っちゃうんだもん。

あ〜

あの後は、大変だったなぁー!」


(そうだ)


昔と変わっていなければ、確か、あの靴屋の営業は、午後六時半まで。


お昼を一時間食べたとしても、まだ営業時間内だった。


『あの後』


俊彦は、私に叩かれ、モミジの残る顔で仕事を続けた事になる。


「…すみませんでした」


私は、厨房から頭を下げた。


「じゃ、こっち来て、一緒に飲もうよ、マーメイドちゃん」


『ロコモコ』君が私を手招きした。


…困った。


私は、咲子さんに救いを求めたが…


「そうね。
二人とは、今日初めて会ったんだし、親睦を深めるのもいいかも」


(そんな〜)


突きはなされてしまった。

「はい、咲子さんの許可も出たから、こっち来る!」

仕方無く、私は重い足取りで、厨房から店内に移動した。


「はい、座る!」


「失礼します」

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