《MUMEI》 『ロコモコ』君は、自分の座っていた席を私に譲って、横にずれた。 私は丁度、二人に挟まれる形で座っていた。 「ねぇねぇ、名前、教えてよ」 「あ、伊東蝶子です」 「蝶子?」 「? はい?」 別にそれほど珍しい名前でもないと思うが、『ロコモコ』君は 「ヒラヒラ飛んでる『蝶々』の蝶?」 と確認してきた。 私が頷くと、『ロコモコ』君が 「なるほどね。だから、『アゲハ』か」 と一人で納得した。 「アゲハ?」 「俊彦の源氏名だよ。あいつ、東京で俺と同じ店でホストやってたんだ」 「えぇ?!」 (俊彦と、『ロコモコ』君が、ホスト?!) 想像してみる。 …似合い過ぎる。 でも… 「何で、俊彦がそんな事に…」 俊彦は私より三つ年上で。 最後に別れた時は、十八歳だった。 確かその時、地元の大学に内定していたはずだ。 それが、一体どうして 東京で、ホストに?! (ん? 東京?) 「あの、俊彦とは、東京で会ったんですか?」 「うん。 あ、すっかりタイミング逃したけど、俺、和馬(かずま) 宗方(むなかた)和馬ね。 年は、俊彦と同じ、二十三歳。よろしくね」 前へ |次へ |
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