《MUMEI》
一銭もまけるな
ベッドに大の男二人が寝るだなんて……暑苦しい。

プルプル震えて、泣くのを我慢してた。

今は静かに寝息をたてている。
額に張り付いた七生の前髪をゆっくり上げた。
閉じた瞳がぴくり、と痙攣する。



可哀相な七生……。

俺しかいないみたいに抱き着いてくる。

寝ていてもまるで抱き枕みたいに離そうとしない。

自信に溢れて煩い七生を誰がこんなにしたんだ。


その祖母だって人?

お父さん?

お母さん?

本当のお父さん?


七生は俺しかいないと言うけれど、気付いていない。

七生の部屋の灯りはまだ点いていて、帰りを待っているのに。

おじさんは俺の家に七生が泊まると知っていて、帰ってこない七生を待っているんだ。

皆、七生のこと好きなんだよ。
俺しか信用できないなら信じられるようにさせてあげるから。

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