《MUMEI》
理由は私?
「あの、和馬さん。俊彦が東京でホストになった理由知ってますか?」


「知ってるよ。つか、ホストクラブで有名だったし。
孝太も、知ってるよな?」

「飽きるほど聞いた」


?


孝太さんはうんざりした口調だった。


和馬さんは、犯人を追い詰めた刑事のような口調で


「理由は、君だよ。
俊彦のマーメイドちゃん」

と言って、私の顔をビシッと指差した。


「わ…たし?」


和馬さんは頷いた。


(何で、私?)


意味がわからない。


「蝶子ちゃん、ここ離れて東京行ったでしょ」


「? いいえ?」


私が父の転勤に伴い、引っ越した場所は…


「私が行ったのは、大阪です」


「え?! 逆方向じゃん!」

そうなのだ。


(あ、そうか)


私は、引っ越し先を俊彦に教えなかった。


父や、咲子さん達にも口止めした。


俊彦は必死で父に『教えてくれ』と頼んでいた。


そこで、父は


俊彦に、ヒントを与えた。

『僕と蝶子は、都会へ行くんだよ』


―と。


ここの人達が真っ先に思い浮かべる『都会』は


大阪ではなく

東京だった。


「うわ、完璧すれ違いじゃん」


和馬さんはため息をついた

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