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《MUMEI》 ｢わーヤイちゃん！こんにちは｣ やっぱり顔に手が掛かる。 ｢……こんにちは｣ 一応、部員の白戸がいないのに来させてもらっているのは申し訳ない。 ｢うんうん。来たね。｣ ｢うらべ？先輩も。｣ ｢そう、卜部。やっと呼んでくれた……世喜でもいいんだよ？｣ いちいち頭触るので小さくなりそうだ。 ｢……卜部先輩、頭止めて下さい｣ ｢ごめんねーヤイちゃんが可愛いからつい。 ちゅーもしちゃうかもよ？｣ ｢寝言は寝て言って下さい！｣ すぐ人をからかって遊ぶんだから……。 ｢頬っぺたプニプニー｣ 頬っぺた突かれた。 ｢ぶぅー｣ 変な音が鳴る。 ｢すいませーん、新田先生居ますか？｣ 新田とは美術部顧問のことだ。稀に部室に来る数学教師である。 その機会を窺って部室にやって来る者は多い。 ｢いやー職員室じゃないかな？｣ 卜部先輩は手慣れた応対をする。 ｢あれ、鬼久保じゃん｣ 気付かれた。 ｢うん……｣ クラスに馴染めてない俺は友人は白戸しかいない。 あとの人達は俺を使いっぱにする。 本当はいっぱい言いたいことあるのに皆に注目されたら体が動かなくなってしまう。 ｢美術部じゃないのに？｣ 威圧的に聞こえてしまう。 ｢白戸待ちだろ。｣ クラスメイトはにやっと目配せし合う。 白戸にまで被害が及んできそうで怖い。 ｢そうだ、鬼久保が新田先生にプリント渡しといてよ｣ プリントは何も書かれてなかった。 この間教えて貰った。 何も書かれてないプリントを渡されたらそれは俺が埋めるということ。 ｢もう帰らなきゃいけないんだよ。今日中までだから困っているんだ。｣ もしかしたら、最初からそのつもりだったのかも。 前へ |次へ |
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