《MUMEI》

(まさか、俊彦が上京したのって…)


私は、恐る恐る和馬さんに質問した。


「私に会いたくて、上京したとか…」


「正解」


(うわぁ…)


違うと言って欲しかった。

「でも、それで何でホストに?」


見つからなければ、諦めて帰ればいいのに。


(しかも、何故ホスト?)


「ん〜、蝶子ちゃんを探し続けて行き倒れてたところを、うちの店長が拾ったの」


「はい?」


私を探して行き倒れって…

私は悪く無いはずなのに、少し胸が痛んだ。


「でね、『好きな女をオトすには、男を磨かなきゃダメだぞ』って、うちの店長が言葉巧みに勧誘して…」

「はぁ…」


「で。伝説のホスト『アゲハ』が誕生したってわけ」

「…伝説?」


和馬さんは頷いた。


「だってさぁ、田舎から出てきた奴が、半年足らずでナンバーワンだぜ!
その後二年間、辞めるまでキープしてたし!」


興奮した様子で、和馬さんは語った。


(そんなにすごかったのに…)


「どうして、辞めたの?」

「『実家の親がもう定年だから靴屋継ぐ』って。

最後まで、『蝶子ちゃんに会えなかった』ってぼやいてたよ。

まさかこんな再会とは思わなかったけど」

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