《MUMEI》
大学時代の先輩。
〜一週間後〜




憐にもコウタにも会いづらくてバイトと家の往復しかしていなかった。




“あれからまだ一週間しか経ってないのかぁ〜。…長いなぁ〜”




一週間がこんなに長く感じたのは初めてだった…。




でも、今は誰にも会いたくないし、しばらく引きこもろ〜っと。




あっ。ダメだ…。今日は大学の時のサークルの集まりかあったんだった…。




久しぶりにみんな集まるんだっけ…?チカさんにも誘われてるし、行かなきゃマズイよねぇ。




チラッと顔だけ出して帰ろっ。




…久しぶりにみんなに会うの緊張するなぁ。




『瑠伊っ。こっちこっち。』




『…こんばんわ。チカさんお久しぶりです。』




チカさんは、私の3つ年上で読者モデルとかやってた大学でも有名な美人だった。




『瑠伊ぃ〜。元気だった?あれ?ちょっと太ったんじゃない?』



『え〜いきなりヒドいですよ。…チカさんは相変わらずキレイですねぇ。』




『何ぃ〜?久しぶりに会ったからってなんかよそよそし過ぎない?』




『そんなことないですよ。私は、前から礼儀正しかったです。』




『えぇ〜?』




そう言ってニコッと笑うチカさんは、本当にキレイだった。




『あのねぇ。瑠伊。いきなりで悪いんだけど、今日はお願いがあって呼んだの。』




『お願い…?何ですか?』




『…うーんとねぇ。』




モジモジして何か言いづらそうなチカさん。




『どうしたんですか?私に出来ることなら何でも言ってくださいね。』




『実はねぇ〜私、来月結婚するの。』




『えぇ〜?おめでとうございます。相手は高校時代から付き合ってるって言ってたタチバナさんですか?』




『うん。そうなんだ。ありがと。…そこで、瑠伊にお願い。結婚式の二次会の幹事をしてほしいの。』




『…幹事?…私が?そんなの無理ですよ。私、やった事ないし、そういうの苦手ですよぉ。』




『えぇ〜そう言わずに、一生のお願い。二次会って言ってもすごくラフな感じでいいの。こんな感じでワイワイ飲めたらなぁ〜って。幹事の仕事は、お店決めと参加者集めだけだから。…お願い。』




学生の時から憧れてたチカさんが、私に何度も頭を下げてきた…。




“よし。やってみるか。”





『…チカさん。私、やります。やらせて下さい。』




『本当?ありがと。どうしても瑠伊にしてほしかったんだ〜。感謝するよっ。』




『私、頑張ります。…でも本当に私なんかでいいんですか?どうして…?』




『だって〜あの頃の瑠伊は毎日、本当に楽しそうだったもん。瑠伊とヨウスケくんの周りには、いつも笑顔があって2人を見てると、コッチまで幸せになった。だから“幸せになる”っていう、おまじないかな?』



『…あっ。えっと…。そうですか…。』




私はチカさんが卒業した後、ヨウスケと別れたと言えず、ずっと隠していた。
…チカさんに言わなきゃ。



『…あの〜。チカさん。実は私、ヨウスケとは3年前に別れたんです…。ずっと黙ってて、すいませんでした。』




チカさんは一瞬驚いた顔をした後、すぐに、



『またまたぁ〜。』




と言って信じてくれなかった。




『…本当なんです。』




私の半べそ顔を見て、ようやく冗談じゃないと分かってくれたみたい。




『…ゴメン。私、何も知らなくて…。』




『…なんでチカさんが謝るんですか?私の方こそ、おめでたい時にこんなこと言っちゃってすいません。』




『…違うの。』




チカさんはそう言うと、困った顔でうつむいた。




『…。瑠伊…。私、何も知らなかったからもう1人の幹事をヨウスケくんに頼んだのじゃったの。昨日ヨウスケくんに会ってね…。』



『…ヨウスケに会った?』



“ヨウスケが帰ってきてるの?”

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