《MUMEI》

   〜歩視点〜


ドキドキ――。

俺の胸は緊張のため速度を上げる。


やっぱり乙女の家に1人で来たのはマズいかな・・・。

とは言ってもさっきまでその乙女の家に居たのだが。

インターホンを押した後も俺は1人であたふたしていた。


キィ――。

ドアが開かれるのと同時に美しい女の子が出てきた。

美しい女の子は俺を見て声を上げる。


「歩っ?どうしたの?忘れ物?」


「いや・・・何か麗羅チャンも栄実も元気なかったなぁなんて思って心配で」

美しい女の子――麗羅チャンの質問にちょっと遠慮がちに答える。


麗羅チャンは少し驚いた後に、そっかっと小さく言って苦笑した。


麗羅チャンのそんな悲しそうな表情を見ると俺も悲しくなってしまう。

「話したくないならいいんだけどさっ!
俺に出来ることがあったら・・・言ってね!」

そう言って俺が微笑むと麗羅チャンは

「ありがとう・・・歩。」っと言って微笑んだ。


そして
「でも、もう少し自分で頑張ってみるね」っと続けた。


「そっか・・・」
麗羅チャンのその言葉に、少し寂しくなった。


そんな気持ちを悟られないように・・・っと俺が別れを切り出そうとすると

「でも、1人で頑張れなくなったら歩に頼っちゃうかも・・・」

っと麗羅チャンがポツリと呟いた。

そんな弱気な麗羅チャンは凄く健気で可愛いなぁっと思った。

そして麗羅チャンの心に俺が存在していることがその言葉から伝わってきて

「どんどん頼っちゃって!!

俺、麗羅チャンのためなら何でもするから!」っと満面の笑みで答えた。

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