《MUMEI》

オレは荷物を手にとり炎が消えない様注意しながら、枯れ木や新聞にジッポオイルを掛け中心目掛けて投げ込んだ。


炎が勢いよく猛る。

灰が風に乗って、オレの頭や側に止めたレンタカーのボンネットの上に舞い落ちる。


舞い落ちてくる。


絶望という言葉の全てが遥か上空からオレの頭、体、魂を目掛けて。

舞い落ちる。


オレが失いたくない全ての証が、軽々しく、いとも簡単に指の間から滑り落ちてゆく。


足下に散らばった灰色の幸と絶望を、ただ眺めるだけしか出来ない。

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