《MUMEI》

洗面所の方からは、相変わらずガチャガチャと準備に奮闘する彼女らしい一連の音が聞こえていた。

その時オレはまだ、布団の中でまどろんでいた。

いつもどうりの午後に、まどろんでいた。


14時30分。


全ての「はじまり」が、はじまったのだ。

枕元にあるケータイから、寝起きに似つかわない着信メロディーが鳴る。

職場からの一本の電話

誰から?と洗面所から声がした。
電話越しで上司は、警察から店に電話があったと言った。

イタズラ電話かもしれない、とも。

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