《MUMEI》

洗面所には、事の一部始終を聞いていた彼女が涙を溜めながら立っていた。

オレは己の声で、
「ゴメン、仕事おさめ見届けてやれない。」 と呟いた。

絶望という意味を、魂全てが理解した。

急激に変わる景色の中で、唯一の存在である彼女を抱きしめた。

強く、強く、オレは生きてる意味を理解する為、生ある暖かさを感じる為に彼女を強く抱きしめた。

生きる術を忘れない様に。

オレは着替えるとドアを開け、使者達に誘導されながら車に乗りこんだ。

乾いたエンジン音がなり、オレが知っているとうりの動きでゆっくりと発進した。

座席から振り返り、彼女を残したアパートを一瞥した。

空はどこまでも青かった。

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