《MUMEI》

エレベーターに乗り連れてこられたのは、物々しい鉄扉が連なる取調室だった。

ほんの何時間か前までは、オレは自分の寝室で寝ていた。
彼女の送別会、労いの言葉なんかをしきりに考えてた。
しょうもなく、無尽蔵にある愛と平和の日々をただ、ただ無駄づかいしてきた。


その引きがねは一瞬だ。

そんな事はわかっているつもりだった。
オレは6人家族で、祖父母と両親、兄がいた。

いたのだ。

祖母は2年前に、祖父は9ヶ月前に亡くなった。

心は、出口のない暗い森をさ迷った。
無傷では出られない、深淵に続く深い森だ。

光は届かない。

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