《MUMEI》

日常という言葉の、ちからの効力が消える。
迫るのは、黒い塊なすモヤ。

悲しみや、怒りや不安などとは位置づけ出来ない、決して言葉では表現出来ないモヤが迫る。

取調室を出ると、別室で同じく取調を受けていた叔父と合流した。
少し遅れて兄にも逢えた。

兄は多少取り乱していたが、果てる精神の中この現実と一生懸命戦っていた。

兄は見たという。

母の姿を。

そして、警察に電話をし全てが始まったのだ。

失ったもの、
それは最愛である母、
それは最愛なる父、

それは光や希望など目に見える生きた力、
それは本当の日常、
それは部分的な家族の思い出、
そして無償の愛。

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