《MUMEI》
来ない刑事〜洋平・美樹side〜
「来ないね…刑事さん。」
美樹は、壁に掛かっている古ぼけた時計を見ながらため息をつく。

針はもう十時をさしていた。


「…だな。公務員って大体九時には出勤するもんじゃねぇのか?
いくらお偉いさんでも、これは遅刻し過ぎだろ…。」

洋平は窓から目を離さず、氷の溶けきったアイスコーヒーを口に含む。

薄くなったコーヒーは、お世辞にも美味しいとは言えなかった。


「もしかして、今日休みとか…?」


美樹は、不安そうに洋平に聞いてみた。


「可能性あるな…。」

「だったらマズくない?あの刑事さんの居場所分からなくなっちゃう!」



確かに美樹の言う通りだ。刑事の居場所が分からない限り、司達も身動きが取れないのだ。



どうするか…?





洋平は暫く考えた後、何か閃いた様に、椅子から立ち上がった。


「おい、美樹!ここ出るぞ!」

「え!?」

「いいから早くっ!」


何が起きたか理解できないまま、美樹は洋平に引っ張られるようにして、店を後にした。

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