《MUMEI》
ヨウスケとの過去。
『ヨウスケ帰ってきてるんですか!?』




私の声は、店内に響いていた…。




『…うん。ヨウスケくんにも幹事を頼もうと思ってね…。あの子に…。え〜名前なんだっけ?ド忘れしちゃった。あのヨウスケくんといつも一緒にいた面白い子……。』




『…いつも一緒にいた面白い子?……もしかして、コウタですか?』




『そうそう。コウタくんに連絡先を聞いたの。そしたら、ヨウスケくん今週帰ってくるって言ったから昨日会ったんだ…。』




“…そんな…どういうこと?私、何も聞いてない。…コウタはヨウスケと連絡とってたの…?”




『瑠伊。大丈夫?…なんか驚かせたみたいでゴメンね。昨日、ヨウスケくんも瑠伊と別れたなんて一言も言ってなかったんだよ。私が“瑠伊は元気?”って聞いたら“元気そうっす”って言って笑ってた。』




…私は頭が真っ白になった。それからは何を話したのか覚えていない。




ただ、チカさんが“幹事の話、もう無理にとは言わないからゆっくり考えといて。”と言ってくれたのだけは覚えてる。




1人の帰り道…




ヨウスケと別れた日の事を思い出していた…。




ヨウスケは、大学に通いながらプロのモトクロス選手を目指してた。




大学を卒業するのが条件で、ヨウスケの親もモトクロス選手になる夢を応援してくれたんだって嬉しそうに言ってた。




でも、あの日…。




ヨウスケは親にも友達にも…私にも内緒で大学に“退学届”を出した。




“夢を諦められない。今しかないんだ。俺、東京に行く事にしたから。”と。




私は泣いた…。声になってなかったけど、必死で『どうして?どうして?』と泣き続けた。




『…ゴメン。』




それがヨウスケの答えだった…。




あれから、3年か…。




ヨウスケの事は考えないようにしてたけど…たまにテレビで、モトクロスの話題がやっていると食い入るように見てしまう…。




思い出して落ち込むたびにリコやコウタに励まされて………。




…?…………コウタ。




…そうだ。聞かなきゃ。コウタに聞かなきゃっ。ヨウスケと連絡とってたのか?って。なんで秘密にしてたのか?って。




マンションに着くと、玄関のドアノブに小さな紙袋が掛けてあった…。




中には“愛知限定”と書かれたエビフライになったキティちゃんのストラップと、しゃちほこ加トちゃんのタオルが入っていた…。




『…コウタだ。』

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