《MUMEI》

意気消沈した七生は寝付きが良かった。

真夏の熱気に反発し全て蹴られて床に落ちた掛け布団。
激しい寝相で腹が捲くれていて胴を跨ぐと膝に腹筋が当たる。ギシギシとベッドが軋んだ。

「起きて……七生」

「……ん…………」

両手で頬を押さえ付けたら瞼を擦ろうとした七生の指を弾いてしまった。

気付けにキスをしてやる。
七生の教えてくれた舌を入れるやつだ。

七生先生みたいに上手く出来ないけれど効果は覿面だったようだ。

「どうした?!」

驚いて俺の肩を引き剥がしし距離をとる。
七生の口に流す筈だった唾液が口の端から垂れた。

「醒めた?」

「……うーん、二郎に全裸で馬乗られているという夢なのかも」

汗を拭うフリをして七生は手の甲で目を隠す。

「じゃあ正夢だ。」

俺も七生の額に滲んだ汗を拭うのを手伝ってやる。

視線を合わせて欲しい。

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