《MUMEI》
スニーカー
翌朝。


私は、咲子さんと厨房で『シューズクラブ』に持っていくケーキを作っていた。

今日のケーキは、クラシックショコラだ。


「あ、そうだ。言い忘れてたけど、お店は専用の靴を履いてね」


そう言う咲子さんは、確かに普段とは違う、専用のスニーカーを履いていた。


(それなら、来る前に言ってくれれば、買ってきたのに)


初日は普段履いているスニーカーで厨房に入ってしまった。


もっとも、私はこまめに靴を洗っていたので、今履いているスニーカーも、それほど汚れてはいなかったけれど。


「あの〜、スニーカーって…」


私は、恐る恐る確認した。

「もちろん、『シューズクラブ』で買ってね。
うちも、あそこのお陰で儲かってるし。
あっちの売り上げにも貢献しないとね」


そう言って、咲子さんは、出来上がったケーキを均等に切り分けていった。


(やっぱり…)


私は頭を抱えながら、それを包装した。


「で、もう予約してあるから、早速これ届けたら、そのままスニーカー買ってらっしゃいね。

はい、お金」


「き、今日ですか?!」


昨日の今日で?


…しばらく、…ずっと会いたくなかったのに

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