《MUMEI》
昔の話
「昔はあんなに仲良かったじゃない」


(昔はね)


私は俊彦の、『俊兄(としにい)』の事が大好きだった。


母を交通事故で亡くした後、私は父と、父の地元であるこの町に引越してきた。

私は当時三歳で、正直、母との思い出少なく、顔もあまり覚えていない。


三歳までは、父の仕事の関係で、何度も引越しを繰り返していたが、父子家庭になった事を会社が考慮してくれたお陰で、私は十五歳になるまでの十二年間をこの町で過ごした。


そういう意味では、ここは私の故郷だった。


雅彦―『雅君』は、商店街で唯一私と同い年ということで、引越したその日に、咲子さんから紹介された。

その時、俊彦にも初めて会った。


第一印象は


『王子様』だった。


俊彦の第一声は


「君、綺麗な足してるね!」


だった―


…思い返して、私はムカついた。


しかし、当時の私は、俊彦に夢中だった。


褒めてもらえるのが嬉しくて、ミニスカや短パンばかり履いていた。


髪も伸ばして、少しでも俊彦に『女の子』として、『特別』に扱って欲しかった。


非常に、認めたくない事実だが、…


俊彦は、私の『初恋』だった。

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