《MUMEI》 裏口で私は咲子さんからお金を受け取り、ケーキを袋に入れて、『クローバー』を後にした。 昨日と同じように、電動自転車で、『シューズクラブ』に向かう。 私は、『シューズクラブ』の裏口の扉の前で、深呼吸をした。 (俊彦がいませんように) 店長だから、いないわけはないけれど、私は祈らずにはいられなかった。 しかも、よく考えれば… 昨夜の事を考えると、和馬と孝太とも気まずい。 …となると、残るのは (雅彦!) 私は、念じながら、声をかけた。 「すみません、『クローバー』で…」 「よく来たね〜! 俺のマーメイドちゃ〜ん!! …あれ?」 俊彦が勢いよく扉を開けた時、私は扉から三メートルほど離れていた。 (し、しまった!) 今日は、このまま帰るわけにはいかない。 私は、ゆっくりと、俊彦に近付いた。 「…これ」 ケーキの入った袋を俊彦の顔の前に突き出す。 「ありがと〜! そうだ! 昨日のオムライスも美味しかったよ〜! 俺好みで!」 「そう」 (この味覚音痴) 俊彦のオムライスはライスにはケチャップを山ほど混ぜて、上からはこれでもかとマヨネーズをかけた一品だった 前へ |次へ |
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