《MUMEI》
キューピット
結局、食事会は佐久間の話が中心になり、千夏の思惑は外れた。


「まさかこんな展開になるとは思わなかったわ・・・」


帰り際、店の前で千夏は少しガッカリ気味に言う。


「私と太一の時に成功したからって、今回も成功するとは限らないってことよ」


そう、あの時は太一がうまく取り計らって千夏は幸せになったんだ。


「何年も前のこと、よく覚えてたわね!?」


「そりゃ覚えてるわよ。私と太一が恋のキューピットになったんだから。」


実は最近思い出したとは言えない。


「キューピットってダサいわね。その言い回し」


「言い出したのは太一よ。私じゃないわよ!」


私が焦って否定をすると、千夏は少し黙ってから言った。


「太一とは・・・もう会ってないの?」

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