《MUMEI》 廊下からは依然、バタバタと足音が聞こえてくる。 科学捜査は難航していた。 指紋も血液の反応もまるで出ないと言っていた。 捜査官の1人がオレに言ったのを覚えている。 「こんなにきれいな家は、ほとんどない。」 オレはそうだな、と感じていた。 母は掃除が得意だった。 母とほうきの組み合わせは、オレも兄にも、思い出の1つだ。 けして潔癖症ではないけれど、自分の住む家が汚いのはイヤだと、母はよく言っていたものだ。 その姿を思い出し、オレは少し笑んだ。 前へ |次へ |
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