貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
頼み
「きっつ〜…」

ヘトヘトになって帰ってきたオレを温かく迎えてくれる人なんて誰もいない。
今、オレは大学がない時は引っ越しのバイトをしている。
今日はお金持ちの家族の引っ越しで、重たい家具ばかりだった。









「明日は筋肉痛だな…」

汗もかなりかいてて、疲れていたけど、今から風呂に入る気力はない。

オレは敷きっ放しの布団に倒れ込んだ。









「…っはあっ……ああっあん……うっ…はあはあ………っ」

「やっぱ処女でしょ?どうして嘘…ついたの?」

「だ…っだって……あた、あたし……っ恥ずかしくって……あ…やっ」

「嘘をつくなんて悪い子だね。お仕置きが必要だ」

「お……っお仕置き…?」

「そ。ハーイ、脚開いてー」

「あ…っやああっ」









処女かよ。マジうぜぇ。








「ああっ!いやああああっ!う…動かさないでっ」








……ダメだ。無視できない。
頭が重くて、動いてないのに汗が噴き出す。



考えずに身体が動いていた。サンダルをつっかけ、部屋を出た。

由自の部屋のドアの鍵は開いていた。ピンポンも押さずに中に入る。



「キャアアアアッ」

突然見知らぬ男が入ってきて、女は悲鳴をあげて慌てて身体を隠そうとする。

でもオレが用があるのは彼女じゃない。





「いい加減にしてくれないか?」

「……何が?」

この後に及んでとぼけてくる由自の根性の悪さにほとほとあきれる。

「オレは明日大学あるし、バイトもある。お前は?」
「…オレ?特に用と呼べる用は無いよ」

「……じゃあこういうことはオレのいない昼間にやってくれ。何度も言うが、オレは静かじゃないと眠れない」

「夜だから燃えるんだろ?わかってないなぁ、俊は」
久しぶりに自分の名前が呼ばれるのを聞いた。俊なんてここで呼んでくれるのは由自くらいしかいない。

由自がゆっくりと立ち上がった。
ジーパンのチャックは下り、ベルトがだらんとたれ下がっている。

……どうやらまだ彼女は処女を奪われてないらしい。今までの言動は全部、指か。

「…じゃあ静かな女を連れてこい。」

「それじゃあつまんないだろ。オレのテクで泣き叫ぶのが喜びなんじゃん」

コイツとは話しが通じてないような気がした。

大きくため息をついた。
あきれたのと、頭痛がひどくなってきたふたつの理由がある。汗もひどくて、前髪をかきあげた。身体が重くて壁にもたれかかる。

「お前さ、ここに何しに来てるんだ?確かにいい女がたくさんいるかもしれない。でもお前は、大学に行くために東京に出てきたんだろ?」

「…目的も無いのになんで大学行くんだよ」

「は…?」

「俊はなんで大学行ってんの?何かなりたい仕事とかあんの?」

…何も、言えなかった。

「大学出たってさ、結局そこらへんの会社に就職して、大学で学んだこと活かせてない人なんてたくさんいるじゃん。無駄だよ。大学なんてさ」

「今さら何言ってんだよ!」

「じゃあ俊のやりたいこと、教えてよ。どうして大学入った?」

「お前……っ」

カッとなって、由自に掴みかかろうとした途端、全身から力が抜けた。そのまま前のめりに倒れていく。







――ガシッ




由自の大きい腕の中に抱きとめられて、完全に身体に力が入らなくなった。


「頭――…痛いんだ。頼むから……静かにしてくれ」

あまりの頭痛と、久しぶりの人の温もりに触れ、涙が出そうになった。

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