《MUMEI》
三つのスニーカー
「お待たせいたしました」

雅彦の声に、私は顔を上げた。


雅彦は、三つの箱を持ってきた。


「ねぇ、雅彦」


「何でしょう?」


「敬語やめていいよ。
幼馴染みなんだし」


雅彦に敬語を使われるのは、違和感があった。


「そう?」


私が頷くと、雅彦は笑顔になった。


「良かった。実は、蝶子ちゃんに敬語使うの違和感あったんだよね」


「私も」


私達は、顔を見合わせてまた笑った。


「じゃ、説明するね。
まず、これが、咲子さんと同じスニーカー」


雅彦は、白地にピンクのラインが入ったスニーカーを取り出した。


「咲子さんは、紐もピンクにしたけど、本来は白だからね」


確かに、今朝見た咲子さんの靴紐は、ラインと同じ色合いのピンク色だった。


「咲子さんはホールも出るから、見た目も重視したけど、俺としては、蝶子ちゃんにはこの二つのどっちかがオススメ」


雅彦は、残りの二足を取り出した。


見た目はそれほど変わらない、真っ白なスニーカーだった。


「どう違うの?」


「まず、こっちね。
持ってみて」


私は頷き、スニーカーを手に取った。


「うわ、軽い…」

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