《MUMEI》

「違うよ……二郎。」

七生が手を振り払う。

「七生……?」

怒っている。

「また、震えてるし……ゆっくり互いのこと求めあえるようにならなきゃ、こんな気持ちのままじゃヨくならない。俺は二郎に最高の思い出作りたい。

気を遣わなくていいから、二郎が居てくれるだけで十分だ。
俺は二郎を抱きに来たんじゃない。抱きしめに来たんだから。

もう、こんな馬鹿な真似は止せ。」

ボロボロになっても、俺のこと考えてくれてた。

「七生…………」

俺の方が泣きそう。

「俺が大切にしてやんないとすぐ自分を捨てようとするんだから……。
服着たら手を繋いで、一緒のベッドで寝ような?」

七生は我が儘で甘えん坊だけど、時折大人だ。

その温かい体温や声で俺から嫌な物を取り除いてくれる。

本当はこんな風に俺に優しい言葉を投げ掛けるのも辛いのに。

「ごめん、七生」

良かれと思ってやったことがかえって裏目に出て七生を困らせた。

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