《MUMEI》
最終チェック
「店長、最終チェックお願いします!」


「はいはい」


?


孝太に呼ばれ、俊彦が孝太が接客しているお客の前にひざまずいた。


「失礼致します」


俊彦は、お客を裸足にして、ベタベタ触り出した。


「お待たせ。…どうしたの?」


コーヒーとクラシックショコラを持ってきた雅彦が、首を傾げた。


「あれ、何?」


私は、眉間にしわを寄せながら、俊彦の奇妙な行動について質問した。


「あぁ、あれはね。微調整の為に触ってるんだよ」


(微調整?)


俊彦は、お客の足を念入りに触ってから、孝太から靴を受け取り、ガラス張りの作業スペースに移動した。

「蝶子ちゃんは例外だけど、普通はね、既製品がぴったりな人はなかなかいないんだよ。

それに、靴は同じサイズでも、メーカーやデザインで、微妙に違うし。

スニーカーはまだ紐で調整できるけど、他の調整は、兄貴がお客の足に触って、サイズを確認してやるんだ。

兄貴の手は、そういうのよくわかるからね。

だから、うちの靴は、オーダーメイドのようだって評判なんだよ」


「へぇ…」


変態ならでは(?)の特技かなぁと私は少し感心した。
(私には関係無いけどね)

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